伯耆の国でいちばん格の高い神社——伯耆国一宮とされるのが、倭文神社(しとりじんじゃ)です。東郷湖を見おろす湯梨浜町の宮内に鎮座しています。鬼や名刀の話とはまた別の、古代の織物と神話につながる社です。

伯耆国一宮・倭文神社とは

「倭文」は読みづらいですが、「しとり(しずり)」と読みます。これは古代の織物倭文織(しずおり)を作った職人集団「倭文部(しとりべ)」に由来します。その祖神とされる建葉槌命(たけはづちのみこと)を祀ったのが、この神社の始まりと伝わります。

社名のとおり、もとは織物の神さまの社。それが伯耆国の一宮として、長く土地の人に敬われてきました。

出雲文化圏とのつながり

この神社にはもう一柱、下照姫命(したてるひめのみこと)が祀られています。下照姫は、出雲の神・大国主命の娘とされる女神です。

伝承では、下照姫が出雲の方から海を渡ってこの地にやってきた、と語られます。出雲と伯耆は海でつながった隣り合う文化圏で、神話や信仰も行き来していました。倭文神社は、その「出雲とのつながり」を今に伝える社のひとつです。

安産信仰と下照姫

下照姫命がこの地で安産だったという言い伝えから、倭文神社は安産の神さまとして信仰を集めてきました。安産祈願に訪れる人が今も絶えません。

また、社の近くの経塚から出土した平安時代の遺物(経筒など)は、国宝に指定されています。古代から平安、そして現代まで、信仰が層になって積もってきた場所です。

出典・参考